好き放題
書き放題
とにかく喋ります
いつ消えるかもわからないブログ
ウメ子は自分で物事を決めるのが苦手だった。
滅多に話せない両親に好かれるには
両親に好かれている姉の真似をしていればいいと思っていたから。
姉がしなかったことはウメ子がやった。
これで好きになってもらえると思った。
ウメ子は姉にはなれなかった。
客観的に見た「姉は両親に愛されている」という事実から
「私も愛されているかもしれない」なんて可能性に気付くことは
まだ幼いウメ子にはできなかった。
布団を被って震えて泣くウメ子に
「大丈夫だよ」と声をかけるのもウメ子だった。
ピアノのイスの上で膝を抱えるウメ子を「頑張ってるよね」と優しく抱きしめるのもウメ子だった。
鏡の前で泣きそうなウメ子に「貰い子じゃないよ」と微笑むのもウメ子だった。
教室の隅で存在するのかもわからないウメ子に「生きてるよ」と頭を撫でるのもウメ子だった。
だからウメ子はいつだって頼ったのはウメ子で、ウメ子にすがって生きていた。
ウメ子の名前はウメ子ではなかった。
ウメ子をそう呼んだ彼女は嘲笑いながら言っていた。
「なんか梅干しみたいな顔だよね。」
ウメ子の容姿はあまり良くない。
いやさほど悪くはないかもしれない。
けれど、「かわいいのか」と人に聞かれれば「いいやぶさいくだ」と即座に答えてしまうだろう。
ウメ子は自分の性格が変わっているとは思っていなかった。
けれど担任の先生は二者面談で必ず言った。
「独特っていうのは悪いことじゃないよ。」
ウメ子は意味がわかっていなかった。
ウメ子は中学に上がると言われた。
「変わってるよねー。」
ウメ子はようやく意味がわかった。
ウメ子には優しく声をかけてくれる子がいた。
「私は味方だよ!」
ウメ子は人に弱みを見せることを覚えた。
けれどすぐに間違いだったと思った。
次の日には取り囲む人達がウメ子の弱みを知っていた。
ウメ子は中原中也の「サーカス」が好きだった。
いい詩だと思った。
笑った。
そして泣いた。
ウメ子には話し相手が誰もいないというわけではない。話しかければ必ずこたえてもらえるし、時々話しかけてもらえもする。けして嫌われているわけではない、けれど、だからといって特別好かれているわけでもない。
そんなこと思われないとわかっているのに、なんとなくひとりぼっちだと思われたくなくて
用事があるから一人なのだと装うようにすまほをとりだしたりする。
すまほも、なんとなく周りにあわせて買ってもらった。
ウメ子は自分の名前が好きだった。
いや好きとか嫌いとかそういった概念があると考えることや、そういった感情を巡らせたことはなかった。
けれど少なくとも嫌いではなかった。
ちいさいころから友達や祖母が呼んでくれる「うめこ」という響きに違和感はなかった。
けれどウメ子は大学に上がる頃には名前を名乗ることに抵抗を覚えていた。
「子がつく名前は古くなんてありません」
多くの人がそう言った。
子がつく名前は古いと思われているんだと知った。
ウメ子は金銭事の発生しない芸術を審査することに疑問を感じていた。
その人はそう思った、感じていた
それを根本から否定して足並み揃えるように正していくのは一体なんだと思った。
奇妙でとても怖かった。
感情を抱くことにも正解不正解があるらしいと知った。
ウメ子は「人生自分が主人公」という嘘が大嫌いだった。
ウメ子は友達と長続きしない。
だから今でも友達でいてくれている関係に対してひどく依存と恐怖をみせている。
いつこの関係は終わってしまうのかと
そればかり考えてしまう。
ウメ子は弱みを見せて失敗した
感情をぶちまけて失敗した
ならばと笑い続けていたら
「隣にいる自分が惨めだ」と捨てられてしまった。
ウメ子はなにがなんだかわからなくなった。
笑っていればいいことがあると言われた。
だから笑っていた。
人に弱味を見せることはトラウマになっているウメ子はひたすらに笑った。
それなのに嫌われた。
「ウメ子は強いから」と人は言った
「ウメ子は友達を信用しないんだ」とも言った。
「私、友達じゃないのかな」と聞く者もいた。
ウメ子はわからなかった。
友達とはなんなのかと考えるようになった。
ただその一時の間、自分にとって利用価値のある者と共にいる
それが友達なのかもしれないとも思うようになった。
ならばなぜ、同じ学舎を巣立ってから幾年も過ぎたひとたちが
自分を友達と呼んでくれるのか
自分にどんな利用価値があるのかと
ウメ子はますますわからなくなった。
ウメ子は混乱しているわけではない。
まして自暴自棄になっているわけでもない。
ただ淡々と、冷静に考えていた。
悩んではいなかった。
よーい、ドンのピストル音に
一斉に走り出す人達の中で走り出すこともせずにただそのピストルについて思考を巡らせていた。
群衆をしきるそのピストルをただじっと立ち止まり凝視していた。
例えばそんな話なら
ウメ子がどんな扱いをされるかも
容易に想像がつき、
また納得するだろう。
人々はウメ子を嘲笑う、もちろん いや きっと君も。
良いのだ、良いのだ。
それがこの世界では「正解」なのだから。
ウメ子自身、そんな人がいたら毛嫌いするだろう。
そういう世界なんだ。
ウメ子は足も遅かった。
同じゴールを掲げても、それは果てしない道のりに見えた。
けれど遅れることは許されない。
ウメ子は走らなければならない。
自分のためにも。
それは自分の力になるからではない、
もう周りから少しでも捨てられる可能性を排除するためだ。
ウメ子は思い出した。
この世で人に好かれるために生きているのではない。
ウメ子は、天国に行けるように生きていくのだ。
何が異常で何が正常で何が正義で何が悪か
答えがでないのなら「異常」だなんて言うべきでない。
滅多に話せない両親に好かれるには
両親に好かれている姉の真似をしていればいいと思っていたから。
姉がしなかったことはウメ子がやった。
これで好きになってもらえると思った。
ウメ子は姉にはなれなかった。
客観的に見た「姉は両親に愛されている」という事実から
「私も愛されているかもしれない」なんて可能性に気付くことは
まだ幼いウメ子にはできなかった。
布団を被って震えて泣くウメ子に
「大丈夫だよ」と声をかけるのもウメ子だった。
ピアノのイスの上で膝を抱えるウメ子を「頑張ってるよね」と優しく抱きしめるのもウメ子だった。
鏡の前で泣きそうなウメ子に「貰い子じゃないよ」と微笑むのもウメ子だった。
教室の隅で存在するのかもわからないウメ子に「生きてるよ」と頭を撫でるのもウメ子だった。
だからウメ子はいつだって頼ったのはウメ子で、ウメ子にすがって生きていた。
ウメ子の名前はウメ子ではなかった。
ウメ子をそう呼んだ彼女は嘲笑いながら言っていた。
「なんか梅干しみたいな顔だよね。」
ウメ子の容姿はあまり良くない。
いやさほど悪くはないかもしれない。
けれど、「かわいいのか」と人に聞かれれば「いいやぶさいくだ」と即座に答えてしまうだろう。
ウメ子は自分の性格が変わっているとは思っていなかった。
けれど担任の先生は二者面談で必ず言った。
「独特っていうのは悪いことじゃないよ。」
ウメ子は意味がわかっていなかった。
ウメ子は中学に上がると言われた。
「変わってるよねー。」
ウメ子はようやく意味がわかった。
ウメ子には優しく声をかけてくれる子がいた。
「私は味方だよ!」
ウメ子は人に弱みを見せることを覚えた。
けれどすぐに間違いだったと思った。
次の日には取り囲む人達がウメ子の弱みを知っていた。
ウメ子は中原中也の「サーカス」が好きだった。
いい詩だと思った。
笑った。
そして泣いた。
ウメ子には話し相手が誰もいないというわけではない。話しかければ必ずこたえてもらえるし、時々話しかけてもらえもする。けして嫌われているわけではない、けれど、だからといって特別好かれているわけでもない。
そんなこと思われないとわかっているのに、なんとなくひとりぼっちだと思われたくなくて
用事があるから一人なのだと装うようにすまほをとりだしたりする。
すまほも、なんとなく周りにあわせて買ってもらった。
ウメ子は自分の名前が好きだった。
いや好きとか嫌いとかそういった概念があると考えることや、そういった感情を巡らせたことはなかった。
けれど少なくとも嫌いではなかった。
ちいさいころから友達や祖母が呼んでくれる「うめこ」という響きに違和感はなかった。
けれどウメ子は大学に上がる頃には名前を名乗ることに抵抗を覚えていた。
「子がつく名前は古くなんてありません」
多くの人がそう言った。
子がつく名前は古いと思われているんだと知った。
ウメ子は金銭事の発生しない芸術を審査することに疑問を感じていた。
その人はそう思った、感じていた
それを根本から否定して足並み揃えるように正していくのは一体なんだと思った。
奇妙でとても怖かった。
感情を抱くことにも正解不正解があるらしいと知った。
ウメ子は「人生自分が主人公」という嘘が大嫌いだった。
ウメ子は友達と長続きしない。
だから今でも友達でいてくれている関係に対してひどく依存と恐怖をみせている。
いつこの関係は終わってしまうのかと
そればかり考えてしまう。
ウメ子は弱みを見せて失敗した
感情をぶちまけて失敗した
ならばと笑い続けていたら
「隣にいる自分が惨めだ」と捨てられてしまった。
ウメ子はなにがなんだかわからなくなった。
笑っていればいいことがあると言われた。
だから笑っていた。
人に弱味を見せることはトラウマになっているウメ子はひたすらに笑った。
それなのに嫌われた。
「ウメ子は強いから」と人は言った
「ウメ子は友達を信用しないんだ」とも言った。
「私、友達じゃないのかな」と聞く者もいた。
ウメ子はわからなかった。
友達とはなんなのかと考えるようになった。
ただその一時の間、自分にとって利用価値のある者と共にいる
それが友達なのかもしれないとも思うようになった。
ならばなぜ、同じ学舎を巣立ってから幾年も過ぎたひとたちが
自分を友達と呼んでくれるのか
自分にどんな利用価値があるのかと
ウメ子はますますわからなくなった。
ウメ子は混乱しているわけではない。
まして自暴自棄になっているわけでもない。
ただ淡々と、冷静に考えていた。
悩んではいなかった。
よーい、ドンのピストル音に
一斉に走り出す人達の中で走り出すこともせずにただそのピストルについて思考を巡らせていた。
群衆をしきるそのピストルをただじっと立ち止まり凝視していた。
例えばそんな話なら
ウメ子がどんな扱いをされるかも
容易に想像がつき、
また納得するだろう。
人々はウメ子を嘲笑う、もちろん いや きっと君も。
良いのだ、良いのだ。
それがこの世界では「正解」なのだから。
ウメ子自身、そんな人がいたら毛嫌いするだろう。
そういう世界なんだ。
ウメ子は足も遅かった。
同じゴールを掲げても、それは果てしない道のりに見えた。
けれど遅れることは許されない。
ウメ子は走らなければならない。
自分のためにも。
それは自分の力になるからではない、
もう周りから少しでも捨てられる可能性を排除するためだ。
ウメ子は思い出した。
この世で人に好かれるために生きているのではない。
ウメ子は、天国に行けるように生きていくのだ。
何が異常で何が正常で何が正義で何が悪か
答えがでないのなら「異常」だなんて言うべきでない。
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